社長インタビュー

ABOUT

父親に喜んでもらいたい。
その一心で継いだスクラップ業が、
今では持続可能社会実現の一翼を担う企業に成長。

株式会社エンビプロ・ホールディングス
代表取締役社長 佐野富和 インタビュー

環境事業は、これから成長が期待される分野ですが、
どんな想いでエンビプログループを創業されたのでしょうか。

代表取締役社長 佐野富和(以下「佐野」) : 私は創業者ではありません。この事業は父がスタートさせたもので、私は二代目になります。父は祖父が作った借金を抱えマイナスからの状態でスクラップ業を立ち上げました。金属スクラップ、製紙原料、古布、ビンくずなどを扱う佐野マルカ商店がエンビプログループの始まりです。
幼い頃から鉄くずや紙くず、ボロくずに囲まれて育った私は、「ボッコ屋の富和くん」と言われ、子供心に劣等感を持ち、我が家はなんでこんな仕事をしているのかと恨みがましく思ったこともありました。

そんな私が中学3年の時、ある出来事をきっかけに、家業を継ごうと決心することになりました。それは、夕食時に父に私が生徒会長に選ばれたことを伝えた時です。父は突然泣き出し、「オレみたいな人間におマエみたいな子供ができてうれしい」と私が生まれ育ったことを心の底から喜んでくれたのです。その時の父と、隣で伏し目がちのまま座っていた母・・・今でも目をつむると、その時の情景を思い浮かべることができます。

私はこの瞬間から、私の成長と存在を泣いて喜び感謝さえもしてくれる父を喜ばせるために生きようと心に決めました。その最大のものは、父親が遠慮がちながらも望んでいた家業を継ぐということでした。結果として私は15歳で自分の職業を決めたことになります。もっともそれは、職業として選んだのではなく、両親を喜ばせる手段が、この仕事に就くということだったからですが・・・。

  • 閉鎖した鋳造所の競売物件を一山買した初代閉鎖した鋳造所の競売物件を一山買した初代
  • ボッコ屋の富和くん」と言われていた頃(向かって左から3番目)「ボッコ屋の富和くん」と言われていた頃
    (向かって左から3番目)

実際に家業を継いでからは、どんな体験をされましたか。
転機はありましたか。

佐野 : 私はその後、高校、大学と進学して卒業後、父の会社に入りましたが、時代はちょうどオイルショックで日本中が経済不況に陥っていました。そんな折に父が病で倒れてしまいました。その頃社員は15〜16名程いましたが、日々やってもらう仕事がないという状態で、その上父は生死の境をさまよい、会社の財務状況は日々悪化していくなかで私は精神的にもかなり追い込まれました。23歳にして大きな試練が目の前に立ちはだかったのです。
この苦境を何とかしなければと悩んでいましたが、ある社員が辞めたことをきっかけに自身の在り方を考え直しました。その社員は「常に暗い顔をしているあなたを見るのが辛い」と言って辞めていきました。その出来事を通じて会社の雰囲気や士気はトップの表情や口調で変わることを学びました。辛い時ほど笑顔を、調子が悪い時ほど元気に、無理やりでも積極的にという姿勢をとり続けたところ、経済の回復もあり、少しずつ業績が好転していきました。

父はよく「ウチの会社に入ってくる人は、それだけでも縁がある人、だから有り難いという気持ちを持て」「商売は一時だけで終わるものではない。相手も成り立つようにして相手にも儲けてもらうように」と言っていましたが、その言葉が改めて胸に刻まれました。

この試練は、私にとって大きな転機になりました。何かに挑戦しようとする時、試練という贈り物を与えられることがありますが、それが益々自分を大きくしてくれます。その後も現在に至るまで、時代の変化の波の中、何度もさまざまな体験をしましたが、それらの事に直面し続けた事で、今ではこの仕事をするために生まれてきたと心底思えますし、天職を得られた私は幸せだと実感しています。

  • 日本中が経済不況に陥る中、初代が倒れた困難期日本中が経済不況に陥る中、初代が倒れた困難期
  • 二代目の甘さから巣立つ自覚が芽生えたころ(向かって右から2番目)二代目の甘さから巣立つ自覚が芽生えたころ
    (向かって右から2番目)

視野を拡げて時代を先取り。
活路を拓くため、ビジネスの領域を
海外にも拡大。

積極的な事業展開で、平成に入ってからは日本初の鉄スクラップの本格的な
輸出を開始していますが、成功の鍵は何だったのでしょうか。

佐野 : 日本は太平洋戦争中に鉄スクラップが不足し、お寺の鐘まで徴収する事態になり、戦後も40年以上もの間、鉄スクラップが足りませんでした。しかし、平成に入ると鉄鋼生産量が頭打ちになり、次第に鉄スクラップが余るようになりました。鉄スクラップを仕入れても、国内に売り先がないという状況です。
そこで貿易部を立ち上げ、日本で初めて鉄スクラップを韓国に輸出することにしました。この海外展開は、それまでの富士宮市、静岡県という範囲から、全国を視野に入れてビジネスを推進するきっかけになりました。

貿易部を作り営業の領域が拡大したことは、私にとっても社員にとっても大きな自信になりました。しかし、物流だけでは先行きの見通しは限られているため、使用済みの自動車や家電製品を資源化するための大型破砕機(シュレッダー)を導入することを決断しました。
当時は無謀とも言われるくらい大きな投資でしたが、このことが後々の事業拡大の基盤になりました。

  • 平成元年 現在の工業団地に引越し平成元年 現在の工業団地に引越し
  • シュレッダープラントを導入シュレッダープラントを導入シュレッダープラントを導入
  • 2018年には東証一部に業界初で上場2018年には東証一部に業界初で上場
  • 常に社会にとって必要な事業を創造(最近の事例:リチウムイオン電池リサイクル事業、再生プラスチック等製造事業)常に社会にとって必要な事業を創造
    (最近の事例:リチウムイオン電池リサイクル事業、再生プラスチック等製造事業)

日本初と言えば、2013年には東証第二部に、2018年には東証一部に
業界初で上場しましたが、なぜ上場を目指したのでしょうか。

佐野 : 事業拡大のための資金調達はもちろんですが、最も大きな目的はこの仕事を広く世の中に認めてもらいたいという想いです。鉄スクラップ等のリサイクルは持続可能社会の実現という観点からも、社会にとって不可欠な事業ですが、現在でも人気産業ではありません。
上場によって社会の認識が変わり、社員、取引先、さらには同業他社の皆さまも含めて、この業界に関わる人々が自信をもって働ける業界にしたいという強い想いがありました。

社会起業家の方には笑われるかもしれませんが、持続可能社会の構築を意識したのは、最近なのです。最初は両親、次に家族や親族、社員、取引先と、会社の規模が大きくなるにつれ、喜ばせたいと思う範囲が拡がっていきました。地元の静岡県や日本、そしてぼんやりですが世界にまで視野が拡がったのは60歳を過ぎてからです。不思議なもので視野が拡がるにつれ、応援してくれる人がどんどん増えていきました。

  • 2018年には東証一部に業界初で上場2018年には東証一部に業界初で上場

新規事業を立ち上げる際の基本方針として、どんなことを重要視していますか。

佐野 : 弊社の企業理念の一つに『創業企業 常に社会にとって必要な事業を創造し続ける』があります。当たり前のことですが、目先の利益に走って社会にとって不要な事業を行っては、会社自体が持続できなくなってしまいます。この根本部分がクリアされてこそ持続可能社会の実現に貢献できますし、現業とのコラボレーションがあれば、意義ある新規事業が開発できます。
現在の社員さん達や今後エンビプログループに加わってくれる新たな仲間に、積極的にさまざまな事業を推進していってほしいと考えています。

  • 常に社会にとって必要な事業を創造(最近の事例:リチウムイオン電池リサイクル事業、再生プラスチック等製造事業)常に社会にとって必要な事業を創造
    (最近の事例:リチウムイオン電池リサイクル事業、再生プラスチック等製造事業)

エンビプログループの持続的な成長が
持続可能社会実現の可能性を
高めることにつながります。

エンビプログループが求める自律的な人材とは。

佐野 : 共に働く仲間に望む条件は3つあります。まずは弊社の企業理念に共感していただけること。次に持続可能社会の実現に関心がある方。そしてこれはどこの会社でも求めていると思いますが、自律的な人材です。
私たちは今後、非連続の変化を乗り越えていかなければいけません。そうなると金太郎飴のような画一的な考え方の人ばかりの集団では対応できません。その分自身で課題を設定して、その解決に向けて行動できる方にとっては、エンビプログループはやりがいを持って働ける会社だと思います。

  • グループで活躍する社員の皆さんグループで活躍する社員の皆さん

『持続可能社会実現の一翼を担う』というミッションについて、
エンビプログループの方針は。

佐野 : 私たちが考える持続可能社会とは、資源循環社会、脱炭素社会、そして一人一人が活き活きと活躍できる社会です。私たちの強みは、この3つの領域に事業展開していることです。自社が持続的に成長していくことが、社会の持続可能性を高めることにつながると確信しています。

私自身の役割としては、『持続可能社会実現の一翼を担う』というミッションを遂行するためのアクションを取り続けることです。
そして、社員だけでなくその家族や、取引先、投資家の皆さま、さらに今後ジョイントベンチャーのような形で協業する可能性のある方々など、エンビプログループに関わる方々に、「この会社と出会えて良かった」と言っていただける会社に育成していくことも、重要な役割だと考えています。
当社の事業の中心は循環型社会実現に向けた課題解決ですので、会社の目的(パーパス)と事業の成長が社会貢献と同期しています。このように自らの事業欲の延長線上に社会貢献があるので、今後も私は一切の迷いなくエンビプログループの成長に専念していきます。

  • 本社は雄大な富士山を臨む静岡県富士宮市本社は雄大な富士山を臨む静岡県富士宮市

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